公益財団法人科学技術交流財団地域の産業・学術の最先端研究開発を支える
当財団にはあいちシンクロトロン光センターがありこれを財団で運用しています。本コンソーシアムが目指す次世代バッテリーの研究のためにあいちシンクロトロン光センターが寄与できる有力な分析法について2つの事例を紹介します。この他、当財団では愛知県からの委託事業として重点研究プロジェクトを運用し、26テーマの研究課題を支援しています。その中には広い意味で次世代バッテリー開発につながるプロジェクトも含まれております。
シンクロトロン光による非破壊の素材分析
事業内容
シンクロトロン光の連続光を分光器で分光し、試料への照射X線のエネルギーを変えながら吸収を調べます(吸収分光)。すると、あるエネルギーで突然吸収係数が増大します(吸収端)。この吸収端エネルギーは元素に特有であり、計測した吸収端エネルギーから素材の中の元素を特定することができます。さらに吸収端付近の吸収係数の微細構造から元素の化学結合状態を知ることもできます(XAFS法)。例えばリチウムイオン電池の正極材に含まれるNiが充電で4価に、放電で2価に変化する様子が分析できます。あいちシンクロトロン光センターでは5本のビームラインで、50 eVから26 keVまでのエネルギー範囲で吸収端の分光計測が可能であり、LiからAgまでのK吸収端の計測が可能です。実験室のX線発生装置では単色のX線しか使えないため、このX線分光実験はシンクロトロン光センターでなければできない計測法となります。
シンクロトロン光によるX線CT撮像
事業内容
シンクロトロン光を試料に当て2次元の透過像を撮ることができます。更に試料を回転させ、多方向からの透過像を撮影して断面分布を再合成することができ、最終的には3次元像を得ることができます(CT撮像)。その空間分解能は1〜3ミクロン程度であり、CFRP内の数ミクロンの炭素繊維の像が撮られています。液系のリチウムイオン電池では正極材の厚みが充電状態から放電状態で51ミクロンから54ミクロンに広がることが測られています。この撮像と前項の吸収端構造を見る分光の手法(XAFS)を組み合わせると、2次元の元素分布、価数分布を得ることができます。更にはXAFS-CTによりこれらの3次元分布を得ることも可能です。固体電池の充放電サイクルで発生が懸念されるクラックの診断にも有力な手法と期待されます。
皆様へのメッセージ
その他(取組内容、メッセージ等)
次世代バッテリーの開発は焦眉の急であり、その研究開発にはシンクロトロン光は極めて有効な手段です。これまでもあいちシンクロトロン光センターでは主に上述の手法を用いて電池開発に関連した研究開発が進められて来ています。コンソーシアム参加の皆様の課題解決にも大変有効だと思いますので、お気軽にご相談下さい。あいちシンクロトロン光センターではコーディネーターがみなさまの課題解決に最適なビームラインと実験手法を紹介いたします。各ビームラインには2名ずつのスタッフがおり初めての方でも利用が可能です。「誰でも使える放射光」のご利用を是非ご検討下さい。またコンソーシアムで提案のあった電池開発用ビームラインについては現在、鋭意検討中で、27年度後半の利用開始を目指しています。
企業・機関情報
企業・機関名 | 公益財団法人科学技術交流財団 |
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所在地 | 489-0965 愛知県瀬戸市南山口250-3 |
ホームページ | https://www.aichisr.jp |